83歳祖母の振袖を孫が着てみたら…

 83歳の祖母が成人式で袖を通した、上品な正絹の振袖。約60年の時を経て孫がまとった動画に52万回再生の反響があり、「なんて見事なお品!」「昔の着物は品格がある。重厚で上品!」「相当高価なものとお見受けします…」といった称賛の声が相次いだ。独学でゆるく自由に着物を楽しむ様子を発信している孫の「いちこ」(@gukimono_ichico)さんに、振袖にまつわるエピソードや着物の楽しみ方について話を聞いた。

【写真】「見事なお品!」60年ぶりに祖母の振袖を着てみたら…

■「受け継いだ着物を自分で着られるように」独学で始めた着付けの勉強

――おばあさまの振袖を60年ぶりに着てみた動画に大きな反響が寄せられています。改めて、この振袖(訪問着)にまつわるエピソードをうかがえますか?

「こちらの着物は、祖母が今は亡き曽祖母と一緒に、京都の老舗呉服店である市原亀之助商店さんへ足を運び、たくさん見せていただいた中から気に入って選んだものだそうです。祖母と曽祖母は、いつもこちらのお店で着物を誂えていたと聞いています」

――おばあさまは袖を短くして、訪問着としてお使いになられていたとか。

「祖母には息子しかおらず、成人式のあとにもう着る人がいないからと袖の長めな訪問着に仕立て直したそうです。それからは、結婚式のお色直しやご友人の結婚式、女学校時代のご友人との集まり、お茶やお花の式会など、人生の節目や大切な場面でこの着物に袖を通してきました。家系に女性が私1人なので、長い年月を経て祖母から私へと受け継がれた、たくさんの思い出が詰まった大切な一枚です」

――思い出ごとお孫さんへ…とても素敵です。今回、どうして着てみようと思われたのでしょうか?

「私が20歳の時に着た振袖はちょっと渋めな感じで、あまり好みの柄ではなくって。当時は留学に行っていたため自分で選べず、『祖母の着物のような、可愛らしい振袖を着てみたかったな』という気持ちが、心のどこかにずっと残っていました」

――その願いを、ご自身の手で叶えられたと。

「はい。着付けがある程度できるようになった今なら、自分で着ることができるかもしれないと思い、お正月に思い切って袖を通してみました」

――1年ほど前から着物の勉強を始められたそうですが、そのきっかけは?

「結婚を機に、嫁入り道具としてたくさんの着物を譲り受けたのがきっかけですね。そこには祖母の着物も含まれていたのですが、どれも本当に可愛らしいものばかりで…。しかも、祖母は洋裁学校に通っていたので、自ら仕立てた着物までありました」

――それはぜひ活用したいですよね…!

「着物たちも誰かが着なければ、ただそこにあるだけになってしまいます。それに、私はおばあちゃんっ子でもあるので、祖母が元気な間に祖母の着物を着た姿を見せたい気持ちもありました。『せっかく受け継いだ祖母の着物を、自分で着られるようになりたい』――その思いから、自分で研究しつつ独学で着付けを始めたんです」

――動画には「昔の着物は品格がある。重厚で上品だ」「美しい伝統の柄と絹子の材質、いまと違う!」など、お祖母さまの着物を絶賛する声も相次ぎました。いちこさんは実際に着てみて、どんなところに昔の着物の良さを感じましたか?

「正直、最初は昔の着物と今の着物の違いをよく分かっていませんでした。というのも、祖母から受け継いだ着物に囲まれてきたため、それが私の中のスタンダードになっていたんです。ですがYouTubeの動画にいただくコメントや呉服屋さんのお話を聞くうちに、昔の着物には今では再現できない職人さんの技が詰まっているのだと感じるようになりました」

――「大切にしてほしい」という言葉も多かったですね。

「祖母の着物を着て呉服屋さんへ行くと、『今はもう職人さんがいなくて作れないんですよ。大事にしてくださいね』と言われることも多いです。自分のルーツである日本文化や、先祖の思いを身にまとえる着物って本当に素敵だなと感じています」

■祖母の笑顔と言葉に気付いた「着物を堅苦しく捉えない」ことの大切さ

――フリマアプリで購入した着物を今風に着こなす動画なども注目を集めました。これから着物を楽しみたいと思っている人に向けて、「上手に着こなすためのヒント」や「着物を楽しむためのコツ」がありましたらお聞かせください。

「実は私も几帳面なほうではないので、着付けの際にはコーリンベルトやゴム製の腰紐など、現代の便利グッズの力をたくさん借りています。結びにくい帯は作り帯に仕立ててもらい、さっと付けられるようにしていますね」

――「着物だから、ちゃんとしなきゃ」という考えが、つい頭をよぎってしまうのですが…。

「祖母は、私の不器用な着付けを見ても特に何も言いません。それどころか、着付けのことを話したら『え? 今ってそんなにたいそうなことになってるの? 昔の人はもっと適当に着てたよ。おばあちゃんも着方、適当よ』と言って笑っていました。その時に、確かに着物って昔の人にとっては普段着で、おはしょりがない時代もあれば、ぶくぶくのおはしょりが流行った時代もあった。襟合わせが反対だった時代もあるし、そんなに堅苦しく捉えなくていいんだと気付いて、ふっと肩の力が抜けましたね」

――確かに昔の人にとっては普段着だと考えると、より着物が身近に感じられます。

「着方は一人ひとり違っていて良いと思うんです。むしろ着物は“未完成の衣服"なのではないでしょうか。洋服のように決まった形に自分を合わせるのではなく、自分に布を寄り添わせていくもの。着る人に合わせて着付けた瞬間に完成するのが、着物の楽しさであり醍醐味だと思います。完璧でなくてもいいし、誰かに合わせなくてもいい。未完成でも美しいので、自分の感覚を大切にすること…。この思いこそが、私にとっての『着物を楽しむ一番のコツ』だと思います」

(提供:オリコン) 2月17日 7時40分配信

83歳のおばあちゃんが成人式に着た振袖とは…?

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