コンビニの高価格帯バーガー勝ち筋

 コンビニ・スーパー各社から発売されているハンバーガー。価格は100円台が主流で、ファストフードに立ち寄りにくさを感じる高齢者も気軽に手に取れると重宝している人は多い。しかし、そのクオリティは決して“本物のハンバーガー"に迫れているとは言い難く、パティの肉感や野菜のシャキシャキ感、ひと口食べたときの満足感など、さまざまな課題があった。山崎製パンもハンバーガーシリーズを展開していたが、「ファストフードに負けないハンバーガーを作る」との想いから、300円台という高価格帯の『ダブルバーガー』を展開。菓子パンの域に留まらず、軽食の妥協案でもない。“満足感ある食事"としての体験をコンビニ・スーパーでいかに作っていくのか模索している。担当者に話を聞いた。

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■菓子パンの域を抜け出せない課題感…“食事バーガー"進化期の鍵は「圧倒的な重量感・具材感」

 外食を控えたいとき、手軽に“ジャンクっぽい満足感"を得たいとき、さらにはマクドナルドやロッテリアといった人気のファストフード店が近くにない地域の人たちにとって、コンビニ・スーパーで100円台の価格で購入できるハンバーガーは、“外食の代替"の役割を担っているともいえる。また、高齢者はファストフード店に気軽には入りづらいため、コンビニで簡単に手に入る“やさしいハンバーガー"は大いに必要とされてきた。

 とはいえ、「バンズがぺたんこ」「パティが薄い」などの声もあり、長らく菓子パンの域から抜け出せないままでいるのも事実。同社もここに課題を見出しており、コンビニ・スーパーのパンが「二極化・三極化しているのを実感している」という。

 では、コンビニに求められるものは何なのか? デイリーヤマザキでパンの商品開発を担当するデイリーヤマザキ事業統括本部商品本部神谷智氏は、近年のランチパックの売れ行きの変化に着目し「圧倒的な重量感・具材感があるものが売れている」という。

「例えば『ランチパック』の卵やツナは、通常商品より“大盛り"の方が圧倒的に売れています。ずっしりしていて、具材感がちゃんとあるものですね。最近では、『極厚板チョコとチョコクリーム』という板チョコを“極厚"にした商品もヒットし、品揃えの幅も広がりました。できる限り具材が詰まっているものが売れるというセオリーが見えてきたので、ハンバーガーをはじめとした惣菜パンにも同じ傾向があるのではと予想していました」(神谷氏)

 子どものおやつ、仕事中のランチなど…ハンバーガーを食べうる様々なシーンがあるが、特にコンビニに立ち寄るユーザーは、「新しい価値にプラスして満足感の高い商品を探す傾向にある」と山崎製パン株式会社・古川慶造氏。

 コンビニに行くときに「価格以上の価値があるもの」「気分を上げられるもの」を食べたい――そう思って商品を選ばれるお客様が増えていると感じます。スーパーで値引き品や特売品を探す感覚とは異なる、“品質重視"になると感じるのです。手軽に買えるのですが、一方で“お客様に納得していただける商品"を提案していかなければいけないと痛感しています」

■購入した翌日・翌々日まで美味しく食べられることが差別化のポイント

 「具材感がしっかり感じられる」「食べるときの気分を上げられる」……ハンバーガーで言うと、食べたときの満足感、温めたときのできたて感、肉・タレ・野菜の存在感。菓子パンの域を超えた、“本格的なハンバーガー"を作ること。さらに購入した次の日以降でも美味しく食べられるものを作ることを命題として開発が始まった。

 「人気のバーガー専門店では、モバイルオーダー待ちの行列や、週末にはドライブスルー渋滞が起きているのが現状です。チェーン店でセット購入すれば、1000円程度はかかってしまい、高額すぎるんですよね。

 さらに当社が他社と差別化できるのは、購入した翌日・翌々日まで美味しく食べられる点です。ここを目指すために、既存で販売してきたハンバーガーの作り方をいったん捨てて、バンズの調整やパティの質感をゼロから作り上げていきました」(山崎製パン株式会社・古川慶造氏、以下同)

■「価格は度外視で、また食べたくなる味に」野菜のシャキシャキ感まで感じさせる

 各店のハンバーガーを食べ歩き、圧倒的な違いは“ひと口目から感じる満足感"だと判断した担当の古川さんは、「また食べたくなるような規格にしないと、本物には勝てない」と実感。ふっくらとしたバンズ、肉厚のパティ、ソースとのマリアージュ、野菜のシャキシャキ感によるアクセントが必要だと判断したという。

「当社の既存のハンバーガーは、パンの延長線上の商品だと捉えている面がありました。満足感にこだわる…というところを考えられていなかったんです。これまでは100円台前半の価格帯でしたが、価格は度外視で、まずはどこまでできるのか考えようというところからスタートしました」(古川氏)

 まず、バンズは“ふっくら感"を出すために、新たに開発されたものを使用。「目が細かくて均一な特徴のある生地を使い、バンズの高さを出す工夫を施しました。今まで以上にふっくらしっとり感があるものとなりました。パティは香ばしさが感じられるように焼き目を入れる工程を加えました」(古川氏)。

 『ダブルバーガー』のネーミングにもある通り、パティは2枚。スライスチーズ、ケチャップ、カットピクルス、玉ねぎという具材の構成に関しても、かなり綿密に考えられている。

「主となるパティの肉感をより感じられるように配合を調整し、外部で作るのではなく、自社工場での内製化にしています。トッピング順による味の感じ方や盛り付けなどの生産方法も含めて、試行錯誤を繰り返しました。さらに、野菜のシャキシャキ感にもかなりこだわりました。生野菜とまではいきませんが、カットしたピクルスやオニオンを使用して野菜の食感をしっかり出しています」(古川氏)

■夕方から夜の構成比が他の商品より高い「食事としての需要に応えることができた」

 『ダブルバーガー』は「温めるとさらにおいしい」という特長があり、600Wで40秒温めることで、購入して2日目・3日目でも、美味しさが続くという。

「もっともおいしい状態を検証すべく、日にちや時間の経過と共に、電子レンジで温めては食べてを何度も繰り返しました。ワット数、秒数のバリエーションをしらみつぶしに試し、この商品の最高の状態を見極めています。ファストフードのハンバーガーは、冷めたら美味しさにムラが出てしまいますが、『ダブルバーガー』は時間が経っても食べたいときに美味しく食べられます。ここが、一番の強みだと考えています」(古川氏)

 パティ2枚でずっしりとした質量があり、SNSでは「安定のジャンク感」「肉が主張してくる、味わえるバーガー」という反響も。

「こういった商品をコンビニで手軽に変えるようにすることこそ、当社の役割だと考えます。ファストフードと比べても、コスパもタイパも良く、食の満足感を得られる。まさに今の時代にピッタリのアイテムです。ぜひ温めて、召し上がっていただきたいです」(古川氏)

 発売後、通常のバーガーと比較して『ダブルバーガー』独自の購買傾向が見てとれたと神谷氏。

「ダブルバーガーの売れる時間帯に差異が見られました。朝・昼・夜、様々な時間に売れていますが、そのなかでも夕方から夜の構成比が他の商品より高かった。夕飯として、ガッツリ食べたい時の需要に応えるものであり、非常にチャンスが広がっていると感じました。

 ダブルバーガーのような高付加価値の商品が売れても、値ごろ感のあるバーガーも変わらず2軸で売れています。今後は担当するパン部門で、価格以上に価値のある商品を作っていきたいです」(神谷氏)

「今後は『ダブルバーガー』のような、市場の変化に対応する商品をいかに作ることができるのか。当社の各工場、全国への物流ライン、グループ会社も含めて、人手・機械・ノウハウを自由に組み立てて動かせることに加え、内製化による自分たちでコントロールができるということも当社の強みでもあります。失敗もあると思うんですけれど、お客様の反応を見て仮説を立て、チャレンジし続けていきたいです」(古川氏)

(提供:オリコン) 12月12日 9時00分配信

『ダブルバーガー』チーズ(358円/税込)、『ダブルバーガー』てりやき(358円/税込)

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