中島健人が“性”テーマに挑む理由
アイドルで俳優の中島健人(32)が主演を務めるNetflixシリーズ『SとX』が8月20日に配信開始される。このほど合同取材会が行われ、オファーを受けた時の感想や、自身がこの作品に出る意味、現場でのエピソードを語ってくれた。
【写真】思わずドキッとする…まっすぐ見つめる中島健人
本作は、生殖にとどまらず、愛情表現や自己肯定感にも深く関わる“性"というテーマを通して、人間関係や自分自身を見つめ直し、「愛すること」に向き合うきっかけを与える、すべての悩める大人に寄り添う、ヒューマン・ラブストーリー。
セックスセラピストである霜鳥壱人(中島)が勤める「霜鳥クリニック」には、セックスレス、ED、不倫、性的トラウマ、更年期障害など、誰にも打ち明けられない多様で切実な性の悩みが日々寄せられる。周囲から嘲笑や偏見の視線にさらされながらも、霜鳥は一人ひとりの声に誠実に向き合う。しかし、彼自身もまた、人知れず悩みを抱えていた…。
■今は「俳優としての殻を破る時期」 “世界に見てもらえる"作品へ
――かなり挑戦的なテーマだと思いますが、オファーを受けた時の率直な感想を教えてください
自分の俳優としての殻を破る時期ではあるなと思っていたので、オファーを受けた時に、誰しもが共通のテーマとして持っている「性」というテーマを、アイドルという側面ではなくて、俳優としての側面の自分で描いてみたら、自分の今後の俳優人生がさらに変わっていくのではないかなという気持ちになりました。
全力で挑むべきだなと。「セックスに悩んでいない人なんていませんから」というセリフがあるのですが、誰しも刺さるものではあると思うので、それを自分が言ったらどうなるんだろうなっていう楽しみがありましたね。
――この作品のオファーを受けようと思った一番の理由は何でしょうか?
2021年に、Netflixで『桜のような僕の恋人』という映画作品をやって、その年に次の作品の相談をしていて。その時にアクションものや、ヒューマンドラマなど、いろいろなジャンルがある中で、いくつか提案をしていたんです。
そこから3年後ぐらいに、プロデューサーさんと「何を大切にするか」ということを考えて。俳優としては「世界に見てもらえる作品に出ていこう」となりました。「世界に見てもらえる」共通のテーマとしては、性だなと。いわゆる言語の壁を超える、どの国々の方々も抱える共通のテーマであり、人間はそこに人生を寄り添わせながら生きている部分もあるので、「このドラマを中島健人でやってみたらどうか」という提案をいただいて受けることにしました。
――今作の撮影では「かっこよすぎる」という理由でリテイクがあったとお聞きしました。「かっこよさ」が板に付いてしまっていると思いますが、どのように意識改革をしたのでしょうか?
今はインタビューを受ける側にいるけれど、アイドルをしている18年の中で、インタビューをする側にいることも実は結構多いんですよ。相手から言葉を引き出して、それを自分の言葉にまとめるという立ち位置になる。映画関係者の方や俳優さんと対談するとか。
インタビュアーの立場になることも多いからこそだと思うのですが、最初の“セックスセラピスト"としてのカウンセリングのシーンの撮影では、性に関する悩みを抱えてきた方々の話を聞く時に、聞き方が“僕"だったんですよね(笑)。監督が俊敏に自分のクセみたいなものを全部省いてくれたので、本編を見たら無色透明になっていてうれしかったです。
実際、セックスセラピストの方に、役作りの上でいろいろとお話を聞いてもらったんですけど、話していると落ち着くというか。ハーブティーを出してくださり、相づちも絶妙なタイミングだった。相づちも相性だけど、カウンセリングの仕事をやる上で、相性っていうのは順応させていかないといけない。
自分はアイドルとしてお客さんと対話していく上で、相手の心象や心情みたいなのを汲(く)み取りながら、自分が何を話すかっていうのを理解して、話しているつもりではあります。自分にとって「人の話を聞く」「人の心理状態を深掘りする」ということはやってきたことではあるんですけど、今回の角度は「性の悩み」というところだったから、監督とすごく話し合いをしながら、実際のセラピストの方の立ち居振る舞いとかを参考にして、シーンを作り上げました。
――セラピストの方の聞き方などを学び、実際に仕事に活かせていることはありますか?
今までの僕は、「相づちの数があればあるほど良し」としていたんですけど、そうじゃないんだなって。「無音の時間が与える安心感もあるんだな」と思いました。あとは、相手がこっちを見ているときは、あまりボードを見ないとか。相手がちょっと目をそらした時に、ボードの資料を見て、相手に投げかけるみたいな。対話における必要な振る舞い方、プロセスの構成の仕方みたいなものを学んだ気がします。
――ライブでも活かしているのでしょうか?
僕はライブだと、来てくださっている方の本能を覚醒させるタイプ(笑)。真面目な方ほど、内に熱狂的なものを秘めていると、なんとなくライブをやっていてわかる。その素顔を見られないままライブが終わるのが僕は寂しいので、いつも丸裸にするつもりでやっています。
■3年前から役作りはほとんどしていない「声色や表情、歩き方、仕草は全部感覚」
――カウンセリングについて学んで、おもしろいなと思ったことや興味を持ったことはありますか?
「ミラーリング」かな。元々、大学で心理学を学んでいた時期もあって、印象には残っていて。人と同じ動きをする。例えば(相手が)後ろにのけ反ったら、自分も後ろにのけ反る。水を飲んだらお互いに水を飲む。(相手の)目線が資料にいったタイミングで、自分もそれを見る。というのは学んだことかもしれない。
でも、自分も多くやってきたことではあるかなとは思います。このドラマをやったことによって、これってやっぱり心理学的ロジカルなんだな、と。18歳の時に学んだけれど、32の年になって、カウンセリングでも“療法"として使われているんだなと感じましたね。
――友人や共演者の方などにも「ミラーリング」をしているんですか?
無意識にやってる!でも、腕を組んでいる人を見たら、あえて胸を張りますね(笑)。
――霜鳥壱人を演じるにあたって、意識したことはありますか?
最近、ほぼ役作りをしないんですよ。3年ぐらい前からもうしていないかな。逆に考えすぎるとダメになっちゃうタイプで。自分で用意して作り上げていくエンターテイメントは、自分のライブとか自分の楽曲。ドラマとか映画は、どちらかというとありのままでいって、それを彫刻のように監督にキレイに押し上げていただけたらいいなという感じです。
――中島さんが最近演じられた神崎麗司(映画『ラブ≠コメディ』)や、岡田以蔵(ドラマ『ちるらん 新撰組鎮魂歌』)と比べて、今回の霜鳥壱人はかなり声色が優しいように感じました。これも役作りせずに自然となったのでしょうか?
確かに。感覚かな。俳優をやる上で必要なものは、ロジックという人もいるけど、僕は感覚。泣き芝居の時は、どこで自分のピークを迎えるかっていうのは多少考えますけど、声色や表情、歩き方、仕草は全部感覚ですね。
『SとX』は、草野翔吾監督がかなりこだわる方だったので、読み合わせは何回もしました。監督の演技プランに寄り添わせた、自分の形になった気がします。
――セックスセラピストについて学んだ上で、感覚で演技をした?
セックスセラピストの方とお話しした時に、声色やトーンが優しいんですよね。性に対してお話をしているのに、詰問されるような感じだと結構きついじゃないですか。だから柔和に受け止める。かつ霜鳥には、幼少期の頃の経験が原因のトラウマがあり、常に何かを抱えながら生きていて、自分を飲み込むためにあえてカウンセリングをやっている。少し逆説的な自分の心情を作っていた気がします。それが声色に反映されたのかな。
――少し重めのテーマの中で、コスプレをやられたり、ボルダリングをやられたり、ポップな場面もありました
ボルダリング、すごく楽しい!ワイヤーをつけないボルダリングもあったんですよ。とても難しくて。監督や共演者の方々と、空き時間もずっとボルダリングしていましたね。
――コスプレもお似合いでした
コスプレもめっちゃ楽しかったです。劇中のセリフで「縮地」という言葉が出てくるのですが、技なんですよね。知らなくて、「デュクシ」だと思っていました。そしたら剣術の作法で、昔からあった技だと知って(笑)。岡田以蔵を演じた後だったので、「剣術に関してはお任せあれ」だったから(笑)。楽しかったですね。
■中島健人が考える“目指すべき現場のあり方" 「N's Junior」とのエピソードも
――撮影現場では、託児所の設置やファミリーデーの実施をされたそうですね
Netflixの環境では、結構スタンダードだと聞いていて。僕が海外ドラマを撮影していた時も、ご家族を連れてこられている方も多くいらっしゃった。これは大事だなと改めて思い、この作品以降も、僕の現場ではやるようにしていますね。
ファミリーデーは楽しいし、かつNetflixはご飯が半端なくおいしい(笑)。毎朝鉄板焼きですよ?(笑)温かいご飯、温かい味噌汁、惣菜もシェフの方が作ってくれて。「これ記録しないといけないな」と思って作ったのが、インスタの「ごはんたち」っていうハイライト。「何の現場?うらやましい」っていろんな人から言われていました。現場でご飯って大事じゃないですか?それによってモチベーション変わります。
ファミリーデーは、家族もみんなそのご飯を楽しめました。駄菓子もあります。クラフト部の方がチョコレートフォンデュを作ってくれたり。託児所は、監督やスタッフのお子さんを、楽屋を使ってシッターの方が面倒を見ていました。
――中島さんが考える、目指すべき現場のあり方を教えてください
まずはやっぱり勤務時間ですよね。日本は始まりの時間に厳しいのに、終わりの時間にゆるい印象があります。結果、それでいいものができるかと言ったら、それはわからない。撮影期間に対してギチギチ詰めるのではなく、密度が濃いシーンをやったらもう終わり、とか。
あと食事を充実させたい。それと託児所などで安心できる状況。もう1つは撮影期間までの役作りの期間。海外の作品とかって、みんなで撮影する半年ぐらい前からいろいろやるんですよ。そういうのをちゃんと作り上げていくべきだなと思います。
今回、「僕はこう思っているんですけど、現場の中ではどういう当てはまり方になりますか」「共演者の方はどんなことを思っていますか」みたいなことをカウンセリングして、バランスを取ってくれるアクティングコーチがいたんです。監督も、僕も、新木(優子)さんも受けました。
現場で人が何十人も何百人も動く中で、頑張るきっかけみたいなものが随所にないとだめで。今は我慢する時代ではない気がします。僕が今もファミリーデーを継続している理由は、「私・僕は、子どものために、ちゃんと頑張れているんだな」って実感を持っていただきたいというか。そして子どもたちも「パパこんなかっこいいんだ」「ママこんなすごいんだ」って思うと、家族の時間が豊かになる。家族の時間が豊かになると、現場の時間も豊かになる。「上機嫌で現場に来てほしいな」っていうのがあります。
――この作品のテーマの1つとして“コミュニケーション"があると思いますが、親しい人ほど本質的な話をすることが難しい場合もあります。中島さんが気をつけていることはありますか?
今年の1月のライブで、後輩の「N's Junior」が出てくれた時に、それぞれ足りないものがあって。その足りないものを、直接その場で、みんなの前で言うのは良くないよね。「怒られる時はみんなで、指摘するときは1対1で」がいいと思っています。1対1の中でも、はっきり言ってほしい人、はっきり言うと変わる人、はっきり言わない方がいい人もいるから、そこはその場の雰囲気で決めるかな。
僕が取り入れたのは、ダンサーの「N's Performer」が「N's Junior」をそれぞれ1人ずつ担当して、ジュニアの足りない所を1対1で伝え合ってもらうこと。最終的に僕が指摘するときは、全員に対して一気に言います。
――時間がかかって大変ではなかったですか?
逆にパフォーマーも熱があるし、指導側って成長するんです。だから良かった。
――今回の作品では、普段のキラキラとしたアイドルの中島さんから、衝撃的なワードが飛び出します。ファンの方とお茶の間の方、それぞれにどういう自分を見せていきたいですか?
今ライブツアー中で(取材時)、半年やっているんですけど、よくMCでこのドラマの話をするんですよ。でも、核心の手前でいつも話をやめているんですね。これは、ライブ上でのアイドル的配慮ではあります。
だけど、アイドルとしては「このドラマをやっている自分を応援してほしいな」っていう気持ちです。配信以降は、100%配慮するというよりも、作品のワードをいくつか使いながら、ファンのみなさんにもちゃんとお話したいなっていう風には思っています。
お茶の間のみなさんには、中島健人を通して、性を知ってほしいなって思います。僕は「セックス」に対して5つの自分の考えがあって。まずは信頼。あとはコミュニケーション。自己受容、そして愛。最後に孤独なんですね。
「性」から派生する「セックス」というものは、お互いの孤独をしっかりと分かち合って共有していく。かつ、そこに信頼というものがあって、体のつながりだけではなくて、相手に心を預けられるかどうかという印象です。保健体育の教科書を開いている子ってたまに後ろ指を指されることがあるじゃないですか。でもそれは恥ずかしいことじゃないし、誰しもが持っている悩み、誰しもが抱えているものがあるからこそ、このドラマが今後の時代を生きる方々の1つの“導"になってくれたらいいな。
(提供:オリコン)
8月17日 8時00分配信
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